はっぴー・はろうぃん♪


 10月31日 PM8:00

 LMEプロダクション本社の屋上

 かっと 暗闇に七色のサーチライトが扇形に夜空を照らした。

 その扇の要には 一人の人物が立っていた。

 「よく来てくれたな!諸君!」

 ローリィ宝田社長の登場だ。

 アラビアンナイトの扮装はいつもに比べたら まだしも地味…といえなくもないかもしれない

 …が!なんなんだ!あの台座というか!乗り物というか…舞台装置は!!

 ばかばかしくもどでかいアラジンのランプ!…を かたどっている
 ちょうど ふた(?)のところが 座席になっているようで…
 さながら ランプの魔神…って とこか?!

 「今宵は 魔の集うハロウィンだ。欧米では 仮装してお化けや悪魔を追い払う夜らしい。」

 仕込みマイクのおかげで、声が屋上中にひびきわたる。

 「諸君!ここLMEに襲い来る魔を追い払うのは、君たちに ほかならない!!
 俳優・事務員 仕事の種類は違っても、君たちは 皆、わがLMEの財産であり 私の誇りだ。
 みんな 本当に いつもありがとう!!」

 たちまち、歓声と拍手がわく。

 …どうしたんだ…社長…。

 きょうは なんだか すごぉく まともだ!!

 「そこで 今日は感謝の印に ちょっと趣向を凝らしたイベントを用意した。」

 イベント?

 「な、なんなんだろう…いったい。」

 「どうせ まともじゃないことだと思いますが…」蓮が苦笑混じりにつぶやいた。

 「諸君らには 今から スタンプラリーを行ってもらう。賞品は、これだ。」

 社長が 指をならす。
 と 同時に ランプの注ぎ口の上に ぽんっと 目と口のくりぬかれたかぼちゃが現れた。

 …ように 見えたが 実はスクリーンがはってあって、そこに映っていただけのようだ。

 ざわざわ…と 不満そうな声があがる。
 そりゃそうだ。子どもじゃあるまいし!あんなかぼちゃなんか もらってなにが…

 「ちなみに このジャック・オー・ランタンの中身は こうなっている。」

 スクリーンの中で かぼちゃが角度を変えた。

 とたんに すさまじい歓声に変わった。

 ぎっしり金貨やら宝石が詰まっているのだ!

 「時価にして 3千万。ささやかだが 私からの おこづかいだ。」

 さ…!?
 周囲が 完全に沈黙した!

 「へぇ。なかなか 太っ腹ですね。」

 蓮は おもしろそうに笑っている…!

 な、なななななななな
 「なかなか…」じゃないだろう!!
 このっ 芸能界長者番付 ぶっちぎりダントツTop男が!!

 おまえや社長には 「おこづかい」でも!
 俺ら 庶民にとっては!!!

 「では ルールを説明しよう」

 ぎんっっっっっっっと 音が出そうな勢いで 全員が社長に注目する。
 1音たりとも聞き漏らすまいと必死だ!

 「ここに 20個のスタンプが押せるカードがある。一人一枚、これを渡す。
 このカードに20個のスタンプ すべて押して ここへ一番に戻ってきた者が 勝ちだ。」

 すっと アラビアンな装いのスタッフ達が現れて、俺達一人一人に カードとなにやら
 ウエストポーチを配ってきた。

 「20個のスタンプは 20人の番人が持っている。番人はもう、配置場所にいて 君たちを
 待ってくれている。全員が この社屋のどこかにいて 位置も 決して動かない。」

 ウエストポーチをあけると 色とりどりのキャンディの包みが見えた。

 「番人達が『トリック or トリート?』と聞いてきたら、
 その包みの中から一つ選んで 渡すといい。
 それが 本物のキャンディなら、何事もなく スタンプを押してもらえて無事通過。」

 ってことは!

 「偽物のキャンディもあるってことですか…。凝ってますね。」

 「全くだ!」

 ポーチの中のキャンディの包みは、全て 同じに見える。

 「おっと!開けてしまうと 包みは色が変わる仕組みにしてる。
 中を あらかじめ確認することはできないからな!」

 …みすかされてたか!

 「偽物のキャンディを 渡しちゃったら もう そこで ゲームオーバーなんですかぁ?」

 悲鳴混じりの質問が飛んだ。
 みんな 聞きたいことは同じだ。

 「いやいや。スタンプは くれるさ…ただ…」

 ただ…なんですか!?

 「それは 自分の体で 確認したまえ。健闘を祈る!」

 ぎぎぎーっと 擬音効果の音が鳴る。
 屋上から階下に向かう 4つのドアが開かれた。

 それっと 全員が 先を争って 一番手近なドアに突進した。

 「って!れ、蓮!?行かないのか?」

 「あとで ゆっくり行きます。今、あの中に とびこむのは 窮屈そうですし…。」

 余裕綽々の笑顔だ。憎らしいほど!

 「じゃあ 俺は 先に行くぞ!」

 「ええ、いってらっしゃい。」

 さわやか笑顔で見送ってくれた…が ものすごく むかつくのは なぜだろう…!?


 ドアをぬけた先は、まっくらやみで 人一人やっと通れる幅の迷路に早変わりしていた。
 どういうしくみなのか 先行したはずの人影も見えない。

 「とりっく or とりーと!」

 突然 暗闇から 聞き慣れた声が聞こえる。

 「あ!こ、琴南さん!」

 頭から にょろっと10匹の蛇…
 どうやら メデューサに扮したらしい。

 「とりっく?とりーと?」

 掌を指しだして 近付いてくる。

 あわてて 一つ取り出して 渡す。
 琴南さんが さっそく 包みを開けた。

 ぽんっ

 はじけた音がして 紙吹雪が散った。

 「偽物ですね。」にたりっと 琴南さんがほほえんだ。

 「な、なにを する気なのかな!?」

 「もちろん!石になってもらいます!」

 がっしゃん どっしゃん

 ううっ 重いよ…辛いよ

 一歩一歩が 鉛のように…重い。

 両足に それぞれ5kgの 重しをつけられてしまった。
 気分は まさしく 海賊船につながれた 奴隷…。

 「写メとって!写メ!!」「一緒に撮ろう!ね!」「あ、ずるい!今度は 俺が!」

 ん?
 なにやら やけに 騒がしい一角が…。

 「あ、あの 皆さん 早く 行かないと…賞品が…」

 「いや!こんな機会 絶対、逃せないから!」「一枚だけ!ね!!」

 「は、はぁ…」

 「京子ちゃん?」

 「あ。社さん いらっしゃい!…じゃ なかった!とりっく or とりーと?」

 「あ。ああ うん…」

 か
 かっ
 かっっ

 かわいい!!!!

 紫の超ミニキャミソールドレス 肩はむき出しでまぶしく白い
 なんて 愛らしい 小悪魔ちゃん!!


 「社さん?」

 は!
 いかん!つい…みとれて!!

 あわてて 一つ包みを出して渡す。

 京子ちゃんが 早速 開ける。

 ぽんっ!

 がく!また偽物か!

 「残念 はずれです!」

 今度は なんだ!?手錠か!?首かせか!?

 「社さん、かがんでください。」

 あ〜。首かせ決定…。

 しぶしぶ 腰を落とす。

 ちゅっ v

 …え…?

 いま…の…おでこに 感じた やわらかい…のは…

 「「「えええええええええええええええええええええええええっっっっ!?!??」」」

 群がっていた男どもの 野太い悲鳴がこだました!

 「うそだろ!?京子ちゃんの『悪戯』って それ!?」
 「しまった!ここで、偽物だったら よかったのにー!!」「あー!くそ!!」

 地団駄ふんで 悔しがっている。

 「きょ、京子ちゃん…あ、あの これ…」



 「…いったい…それの どこが バツなのかな…?」

 ひゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜

 とつぜん 辺り一帯が ツンドラ気候に 早変わりした!

 「そ、そうだ!ゴールめざないと!」「しょ!賞品が待ってる!!」

 蜘蛛の子を散らすように 男どもが走り去る。
 今更ながら 当初の目的を思い出したようだ。

 「こ、この口紅 特殊蛍光塗料入りなんです。み、3日間は、絶対 落ちないんですよ。」

 蓮のすさまじい冷気におびえながら 京子ちゃんが答える。

 「こここの…専用クレジングクリーム使えば 落ちますが…」

 なにやら 特殊ケースに 小さいリップクリームのようなものがある。

 「このケース 1万円札1枚入れないと 出ない仕組みでして…。」

 すっと 蓮がふところから財布を取り出し、ケースの細い穴に万札を差し込んだ。

 かたんと リップクリームが ひとつころがり出てきた。

 「さあ!これで 落としてください!今 すぐ 跡形もなく きれいさっぱり!」

 すさまじい形相で 迫ってくる!

 「は、はいぃぃ!」

 あわてて 京子ちゃんが 『ちゅっv』してくれたあたりに 塗って
 これまた 蓮が差し出してきたハンカチでぬぐう。

 「いままで 何人に この『悪戯』やってきたの…?」

 びょぉぉぉぉぉおおおぉおおおおおおおおおお〜!

 木枯らしが吹きすさぶ。
 冷たく厳しい 冬将軍が下りてきている!

 「あああああ あのあの…み、皆さん すごく ラッキーで…あたりばかりで!」

 かわいそうに 京子ちゃんは おびえきっている!

 「こ、この『悪戯』したの 社さんが 初めてなんです!!」

 「…そう…じゃあ」

 「…え?!」

 「お、おい!れ、蓮ー!?」

 蓮が 京子ちゃんを お姫様だっこで 軽々と抱き上げた!

 「これで最後にしよう!帰るよ!!」

 「つ、敦賀さーん!?私!番人役がぁ!」

 「大丈夫 社さんが 替わってくれる。」

 「そ、そんなむちゃな!」

 「替わって…くださいますよね!?」

 その眼の奥に 深くて暗い闇がある!

 「…はい 喜んで…。」

 「つっ…敦賀さーん 与えられたお役目 放り出すなんて 私…」

 「そう?じゃあ 俺が 全員分の『悪戯』引き受けてあげるよ。気がすまないならね。」

 「…うっ!」

 もはや 何も言い返せず 京子ちゃんは 半べそで魔王に連れ去られてしまった。

 「諸君 お疲れ様! Game Overだ!」

 ほどなくローリィ社長の声が響く。あちこちで驚きと不満の声がわき起こった。

 「賞品は 平等に 参加者全員に 分配する。ご苦労だった!!」

 社内中の社員達の声が、一気に歓声に転じる。

 やけに喜色満面な…この声。

 もしかして
 社長…最初から…こうなるよう…?

 「はっぴー☆はろうぃん!屋上には 酒とごちそうを用意した!夜は、まだこれからだ!
 諸君 さあ 楽しい祭りに乾杯だ!」

 歓呼の声が こだました。

 どうやら  ローリィ社長に 完敗…だ。

 俺も 蓮も…!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 



 【おまけ】

 11月1日 LME社 社長室

 「社長!でも 京子ちゃんの『悪戯』は、あんまりひどいですよ!
 口紅落とすのに1万円出せなんて ゲームにしちゃやけに生々しいです!」

 蓮が出してくれなきゃ、今月の俺のこづかいピンチだった!
 サラリーマンは 辛いんだぞ!

 「3日もたちゃ 落ちるのに 今をときめく『京子』のキスマーク。
 1万円も出して 落としたがる男いるとおもうか?」

 「う”…」確かに!
 あの場に居合わせた男どもが あの『悪戯』受けてたら
 ニスでも塗って 永久保存したかもしれない!

 「それに…」

 にやりと 社長が笑った。

 「はずれのキャンディは 全部 おまえのバックにしかいれてなかったんだ 最初から。」

 「へ!?」

 「大事な社員 危険にさらすわけには いかんだろうが…。」

 「俺なら いいんですか!」

 「おまえなら 蓮のヤツも 手加減するからな…少しは…。」

 「…あの…もしかして 俺のバックには あたりのキャンディは…」

 「一つたりとも入れてないに決まってるだろう!
 最上君のとこで うっかり あたりひいたら おもしろくもなんともないじゃないか!」

 「社員で遊ばないでください!!」

 このっ!鬼社長!!

 お。おれの周りには
 魔界のやつらしか いないのか!?

 ハロウィンなんか 一切 関係なしに!!





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『珍魚落雁』の ことりん様に頂きましたvv

もう、薫のへタレ絵からこんな素敵なSSが出来上がるなんて…感動です!!
大魔王な蓮様とか、弄ばれる社さんとか、面白ければ何でも良い社長さんとか…大好きです!!
一人で「にへにへ」していてるのも良いけれど…見せびらかしたかったのでUP許可を頂きましたvv

本当に素敵なSSを有難う御座いました!
薫はコレで1週間は生きれます!!(笑)


薫のヘタレ絵も見てみる?


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